EPA適用における「原産性」とは

EPA適用における「原産性」とは

「原産性」とは何か

 EPA(経済連携協定)を活用して関税を削減しようとする際に気を付けなければならないことの一つに、輸出入しようとする貨物の「原産性」があります。この記事では、「原産性」とは何かを説明します。

 ある物品がEPA締結国の原産品と認められるためには、その物品が原産性の基準を満たしている必要があります。例えば日本で製造された製品を輸出する際に、その製品が日本製としての原産性を持っている場合、「日本の原産品である」ということができます。

日本で製造されたものは「日本製」じゃないの?

 ここで、「日本で製造されたものは『日本製』じゃないの?」という疑問を持たれた方がいらっしゃるかもしれません。実は、輸出入通関やEPA適用が可能かを判断する際には、単に「日本で製造されている」というだけでは日本製とは認められません。日本製と認められるためには、法律や協定によって決められた、一定の基準を満たしている必要があります。その基準のことを原産地基準と呼びます。

 例えば、日本にある工場で製造されている炊飯器の原産性について考えてみます。炊飯器をつくるためには、数百か数千種類の部品を使います。部品の中には日本製のものもあれば、中国など海外で作られたものが使われることもあります。仮にすべての部品が日本製であれば、文句なく日本製です。しかし、99%の部品が海外製で、日本製の部品が1%しか使われていない場合、その炊飯器は日本製として認められるのでしょうか?難しい問題のように思えますが、実は明確な基準が決められています。

3種類の原産地基準

EPAを適用する際に用いられる原産地基準は大きく3種類に分けられます。

1.完全生産品

ある国で完全に得られたもの

例:栽培された野菜や果物。成育された家畜。採掘された石炭。

2.原産材料のみから生産される産品

国内で製造され、または得られた原材料のみで製造されたもの。

例:日本酒ですべての原材料( 米、米こうじ、水 )が日本製のもの、炊飯器ですべての原材料が日本製のもの

3.品目別規則を満たす産品

品目のHSコードごとに決められている品目別規則を満たしている製品。

例:中国製のポリプロピレンを材料として、日本で製造されたまな板

「 1.完全生産品 」は農畜産物、海産物、鉱物、資源のようなものですので、最も判断がしやすいです。

「 2.原産材料のみから生産される産品 」は、日本酒のように原材料の種類が少ない製品は適用しやすいですが、炊飯器のように多数の原材料を使っている製品で適用することは難しことがわかります。

「 3.品目別規則を満たす産品 」はいわゆる工業製品と呼ばれる比較的高度に加工される製品で適用されることが多い基準です。機械、電子機器、プラスチック製品、衣類、雑貨、加工食品などかなり広範囲の製品に対してこの基準が適用されます。ただし、HSコードごとに基準が決められているため、一概にどの程度の加工を行えばこの基準を満たすかと言い切ることができません。次のような確認手順を取る必要があります。

(1)製品のHSコードを特定する。                

(2)HSコードごとの品目別規則を確認する。           

(3)原材料や製造工程を調べて品目別規則を満たすか調べる。       

上記の(1)~(3)の手順については、改めて解説をします。

まとめ

 EPAの適用による関税削減を試みる輸出入者にとって、原産性を満たすかどうかの判断が大きな障壁となり得ます。自ら調査や勉強をされて関税削減を実現されることもありますが、EPAや通関に関する専門知識を持つ専門家の支援を受けた方がより早く実現することができます。今後の記事で、自ら調査をするための具体的な方法と、どのような場合に専門家の支援を受けるべきかをご説明していきます。

なお、この記事に関するお問い合わせや専門家への無料相談はこちらから!

Translate »