EPA・FTAとWTO協定との関係

EPA・FTAとWTO協定との関係

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地域間協定と多数国間協定の関係

 FTAやEPAのような二国間協定あるいは地域間協定と、全世界的な多国間協定であるWTOとの関係はどのように考えるべきでしょうか?両者が抵触した場合はどちらが優先されるのでしょうか? 

 WTOは広く世界をカバーして決められたルールであり、多数国間で合意しています。一方EPAやFTAは、二国間あるいは地域間で特別な合意をするので、こちらは例外にあたるとも考えられます。例えばWTOの基本原則である最恵国待遇からみれば、矛盾するのではとも考えられます。

 一方、EUやNAFTAをはじめとする地域協定の存在を否定すれば、WTO体制そのものが成立しないことになりかねません。そこで、WTO加盟国は、地域協定の域外に対して障壁を高めないこと等、一定の条件下に地域協定を認めています。

WTO協定交渉の挫折から生まれた地域協定への期待

 本来は、関税削減に代表される自由貿易を推進する動きは、世界全体を巻き込んだ形で、多数国間条約であるWTOで規定さえれることが望ましいと考えられます。ただ、WTOのドーハ・ラウンド交渉が事実上頓挫し、世界の足並みを揃えることの難しさに直面している現在は、その次善の策として、地域協定の期待が高まっています。そして、各国も地域協定の網の目を張り巡らさせる方向で自国の貿易活性化を推し進めているというのが現状です。

 特に、韓国は早くからFTA交渉をスタートさせ、EUや米国とFTAを発効済みです。日本は少し出遅れましたが、最近ではFTA締結を積極的に行なっており、2019年2月にはEUとの間で協定を発効しております。

自由貿易の推進と国の課税権のせめぎ合い

 このように、本来であれば、WTO協定の中で一元的に自由貿易が発展することが期待されておりましたが、現状はそのような形にはならず、多元的に各国、各地域ごとでFTAやEPAを締結していく状況となっております。また、昨今のトランプ米国大統領の動きのように、自由貿易とは逆行するような動きもあり、国際協調をベースとする自由貿易推進というベクトルと、各国の専権事項である課税権(関税を決める権利)を強化し、国内産業を守るというベクトルは、時代時代、各国毎の国内事情を反映して、複雑に絡み合っているというのが現在の国際経済情勢です。

 企業は、そういった複雑な国益に挟まれながらも利益を生み、会社を発展させるためには、このような複雑に絡み合った情勢を把握し、より自社にとって有利となるようにFTAやEPA、WTO協定をうまく活用する必要があります。

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