ヒロさんの貿易実務ガイドブック vol.1

ヒロさんの貿易実務ガイドブック vol.1

 あなたは会社の命令でいきなり貿易実務の部署に配属されました。全くの未経験で何をすれば良いかわからず、業者からも訳の分からない用語で何かを語りかけてきます。あなたはパニックに陥ってしまいます。どうしたらいいの……?

そこでまず、あなたがする事は…

1. 通関業者に依頼するための書類を揃える

輸入通関の際に必要となる書類があります。

  • インボイス・・・仕入書。請求書のようなもの。輸出者が作成してあなたの企業に送付するものです。)
  • パッキングリスト・・・包装明細書。買い付けた商品の荷姿を表す書類。どれだけの個数、重量、容積があるのか?の記載があります。この書類も上記と同じように輸出者が作成をしてあなたの元に送られる書類です。)
  • 船荷証券・・・BLとも言う。輸出国で船積をした際に依頼を受けた船会社が輸出者に対して発行する書類。有価証券機能もある。)

以上、基本的にはこの3点が輸出者から取り寄せるべき書類となります。

 その他はその輸入する商品に関する資料(仕様書や写真。材質や用途が客観的にわかる書類)も必要ですがこちらは国内で用意できるかもしれませんね。一通り書類を用意したらまず全ての書類が同一商品についての書類である事を確認しましょう。インボイスはA、BLはBの商品の書類だった、と言うことがないようにしましょう。

2. その他の必要な情報を確認し、資料をまとめる

 もうすでに商品の発注はしてしまい、船積間近、または出港してしまっているかもしれません。本来であればその前に確認をしておくべきポイントがあります。

輸入禁止品かどうかの確認

 まず、その商品が日本に輸入できる商品である事の確認をしておく必要があります。商品カテゴリーによってはそもそも日本では輸入を禁止されている商品がありますので、そういった商品は決して発注はしない事。それを確認せずにまたは知らずに船積みをしてしまった場合、日本の港において廃棄扱いか、元来た港に積み戻し手続きをしなければなりません。相当な費用と労力がかかります。詳しくは税関のHPに記載があります。

 船積みした後にそれがわかった場合は委託してある通関業者に連絡をして上記の対応の準備をする必要があります。

輸入申告前の輸入品目に応じた各種法令の確認

 次に、日本に着いたら商品によっては輸入申告に入る前に各法令に基づいた手続きをする必要があります。例えば食べ物であれば厚生省に対して輸入食品等申請届を提出して合格を得ないといけません。植物であれば農水省に対して、植物、輸入禁止品等輸入検査申請書を提出して合格を得ないといけません。このように各省庁管轄の法令に基づいた検査を必要とする商品を輸入する場合は、それぞれに申請をして合格を得なければ輸入はできないと規定されています。こちらも税関のHPに説明があります。

 輸入する商品がいずれかの法令に抵触するようなものであればこの場合も通関業者に相談して事前に準備する必要があります。可能であれば出港する前に確認できて準備をしておきたいものです。日本に着いてからこれらの申請の準備を始めた場合、許可をもらうまで数週間から一ヶ月の時間がかかる場合があります。

3. 通関業者へ業務を依頼する

 上記にあげた通り、用意すべき書類、確認すべき事項をチェックしたら、輸入通関を通関業者に依頼をしましょう。あなたの会社で今まで付き合いのある通関業者があればそちらでも良いですし、無ければHPで検索すると様々な通関業者が出てきますのでそちらでも良いと思います。

新規で通関業者に依頼する場合は、相見積もり

 新規で通関業者に依頼する場合には、念のため複数業者に相見積もりを取ること、その際輸入商品の説明をする事、納税方法の手段を提示する事。するとあなたの依頼を引き受けてくれるかどうかや、複数の業者の中で料金の高低がわかるのでどの業者を選ぶか検討する事が出来ると思います。

輸入関税、輸入消費税の納税方法

 納税方法についてですが、まず始めに輸入通関の仕組みとして税関に輸入申告をした後に輸入関税、輸入消費税を納税してはじめて輸入許可となり貨物を引き取る事が出来ることを理解しておく必要があります。その税金を税関に収める方法の話です。

過去に輸入実績がある場合

 あなたの会社に過去に輸入実績があるのならばその時の納税方法を前提として社内に確認をしましょう。輸入実績がない場合には、これから説明する納税方法を理解して社内の決裁権のある上司に相談をしてみましょう。

 納税方法は、あなたの会社の口座から直接引き落とす方法と、あなたの会社の中である種の担保を税関に提供をして納税を数ヶ月後に伸ばす方法(これを延納と呼びます)と、委託する通関業者に一旦立て替えてもらう方法があります。

 あなたの会社に過去に輸入実績があり、上記二つ目までのどちらかの方法で納税されているのであれば、すでに会社で口座や担保が用意されているという事なので社内に確認をして然るべき情報を通関業者に連絡すれば良いでしょう。実績が通関業者の立て替えという事であればその旨依頼をすることになります。

過去に輸入実績がない場合

 輸入実績がなかった場合ですが、上記二つ目までの方法の設定は準備をするのに時間がかかります。今のタイミング(船積みされた後)ではそれらを準備するにはほぼ間に合いません。現実的に通関業者に立て替えをお願いする事になると思います。立て替えは通関業者にとって負担でしかありません。上手に交渉していきましょう。支払方法も前払い等での対応も検討する必要もあります。

4. 輸入許可になるまで通関業者からの報告を待つ

 委託通関業者と作業料金や支払条件を合意をしてその後通関書類を送付したら、あなたはあとは待つだけです。船が入港して通関業者は輸入通関に入りますが、その過程で商品等の質問があなたに問い合わせが来るかもしれません。これは申告先の税関からの質問です。正確に的確に回答する必要があります。場合によっては追加の資料の提示を求められる可能性もあります。速やかに準備をして通関業者に提出しましょう。余程の事が無い限りは輸入許可となりますが、まれに通関が進まない、許可にならない、という事も生じます。そういった場合の対処の仕方を心得ているのが通関業者です。今後どうすれば良いのか?遠慮なく相談をしましょう。

5. 納品スケジュールを通関業者と決める

 上記4とどちらが先かという事もありますが、たいていの通関業者は貨物の配送段取りも行えます。運送方法の選定、運賃の見積もり等、依頼をしましょう。あなたのネットワークに運送業者があるのならば、その配送の見積もりを取ることも運賃の参考にはなります。ただ港湾地域は内陸の配送と違い非常に配送の手配がし難く、環境が違います。内陸の業者の運賃が安いからと言ってそちらに依頼をして受託してくれるかは分かりません。あくまで港湾の配送の運賃が高いか安いかの比較のための相見積もりになると思います。

6. 無事に納品が終わったか確認する

 配送を通関業者に依頼をして、通関が終了した貨物を配送してもらいます。こちらから問いかけをしない限りは通関業者側から配送完了の連絡は来ません。1日に多量の配送を手がけているため一つ一つ配送完了の確認を取れないのです。貨物を配送する際に納品先において納品伝票を提示をし受領書を回収するケースが殆どなので、その受領書の取り寄せを依頼する事はできますが時間はかかります。

以上6つのステップを踏むことで、あなたは無事に輸入貨物を目的の配送先へ納品する事ができます。

 貨物が現地から日本に移動する所要時間や距離を考えると、不安定要素が沢山あります。トラブルが起こった際は通関業者や船会社代理店(フォワーダー)、社内にいる貿易実務経験者に相談し、様々な情報を収集して解決していきましょう。一人で、一人の考え方のみで解決できない事が沢山あります。貿易に携わる業者は全てプロです。遠慮なく相談しましょう。

なお、この記事に関するお問い合わせや専門家への無料相談はこちらから!

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